第6回(2003/11/11)

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 手ブレの画像=人々が行き交う繁華街の通り。カブラ通り。仕事終りのサラリーマン、これから仕事らしき化粧濃いめの女、すでに酔っている浮浪者、コンパの学生、トルエン売り、呼び込み屋、フカし屋、カマし屋、外国人。ネオンが輝き始める街中で、画像は一匹の猫へクローズアップ。それを察知したかのようにカメラの方を見る猫。なんとも言えぬ、すさまじい顏の猫。猫はカメラを一瞥しただけで、通り脇の細い路地へ入っていく。それを追う画像。幅50cmほどの路地。10mほど先をさっきの猫が歩いている。カメラも路地の中へ。路地の左側にはたくさんのゴミ箱、カメラが近づくと無数のハエが飛び立ち、薄暗くて姿は見えないが、ゴキブリたちが走り回っている音が聞える。

 なおも猫を追っかけ進む画像。ゴミ出しの外国人がカメラに向かって日本語のような日本語じゃないような言葉を。先の猫は路地の十字路で一旦止まり、カメラを見てから左へ折れる。小走りにブレまくりなから猫を追う画像。カメラも左へ曲がると、猫は待っていたかのように、こちらに顔を向けていて、また歩き始める。この路地はさらに細い。人一人がやっと通れるほどの幅。猫はスタスタ先を歩き、路地の終り程で、もう一度カメラを見る。その顏はやっぱりすさまじいが、なんだか少しニヤッと笑ったようにも見える。そして消える。それを追う画像、猫が消えた先には、少し広くなった行き止まりの空間があり、そこでは男と女が立ったままでセックスしていた。

   舞台上、下手側で男Aと女が立ったままセックスしている。そこへ、カメラのファインダーをのぞきながらやってくる男B。

 男A「ハッハッハッ、ウゥ、ウゥ」

 と女の顏にキスしようとする。嫌がる女、それでもやめない男A

 女 「・・・、ちょっと、ダメだって」
 男A「なんだよ、アッハッ、ハッ」

 必死に腰を振る男A、そんな二人をカメラで撮る男B、そんな男Bに気付く男A

 男A「撮んじゃねぇよ、このやろう!あっちいけよ、バカやろう!」

 とてもやさくれた感じの男A、そんな言葉にも意を介さず、撮り続ける男B

 男A「やめろって!何撮ってんだよ!見んじゃねぇよ、バカやろう!ほら、どうだコノやろう!何撮ってんだよ!アー、ヤベ、イキそう!見るんじゃねぇよ!」

 と言いつつもさらに激しく腰を振る男A

 男A「アー!アー!アーハハハ!ダメだ!撮るんじゃねぇよ!イクぞバカやろう!オー、オー、オオォォ!」

 とうなりを上げてイってしまう男A

 女 「・・・」
 男A「ハァ、ハァ、ハァ、イッちゃった・・・」

 コトが終り、少しの余韻があり、男Aはズボンを上げる。女も足首にひっかかっているパンティーをはく。男Aは先程のやさくれた口調とは打って変わって、とても穏やかだ。

 男A「あぁ、気持ち良かった、しかし早いよね、早すぎだ、まいったな、ありがとね、あぁ、まいった」
 女 「・・・、顏はなしですよ」
 男A「え!?あぁ、そうだったね、ごめん、ごめん、どうしてもさ・・・、じゃ、コレ、3でよかったんだっけ?」
 女 「はい」
 男A「はい」

 と紙幣を3枚渡す。

 男A「じゃまた、よろしくね」

 と男A、今度は男Bの方へ行き、

 男A「もう、いいよ、ありがとね」

 と男Bのカメラを受け取る男A

 男A「バッチリ撮れた?」
 男B「バッチリ?」
 男A「バッチリ」
 男B「バッチリ!」
 男A「ホント?・・・OK、OK、えっと、じゃ、5千でいい?」
 男B「はい」
 女 「ダメだよ!1って言ったじゃない」
 男B「1って言ったじゃない」
 男A「あぁ、そうだっけ、ごめん、ごめん、じゃ、はい」

 と紙幣を1枚渡す。

 男A「うん、じゃまた、よろしくね、気持ち良かったよ、じゃね」

 と男A、去っていく。

 女 「まったく・・・、ダメだよ、すぐ“ハイ”って言っちゃ」
 男B「はい」
 女 「・・・足、つる」

 と脇にあったなんかベンチっぽい箱に座る。男B、所在なげにたたずむ。

 女「はい!」

 と自分の横のスペースをたたき、男Bにも座るようすすめる。男B、座る。遠くでは、パトカーだか、消防車だか救急車のだかのサイレン、おそらくそれら全部。そこは、夕刻のカブラ通り、路地裏の行き止まり。

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