第5回(2003/10/23)

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 犬じゃダメだ。犬を殺せても、人間は殺せない。なぜなら犬は人間を恨まないから。そんな気がするから。って言うか、犬が本当はどう思っているのかとか感じているのかなんて、まったく関係ない。オレ自身の問題。オレは“犬は人間を恨まない”と思っている、それで充分。恨みをかわない殺しなんて、人間としてしちゃダメでしょ。

 その点、猫は人間を恨む。もちろんこれもオレはそう思うって話しだけど。犬と猫、何が違うのか?顔つき?確かに、人殺しバリの顔をした犬ってあんまり見たことないけど、人殺しバリの顏をした猫は、わりとよく見かける。オレが知ってる限りでも、5丁目に3匹、2丁目に1匹、あとカブラ通りには、人殺しと言うかジャンキーっぽいのが2匹、みんな震え上がりたくなるぐらい、すさまじい顔をしている。5丁目なんて、今は日本人ヤクザと中華連が争ってとんでもないことになってるけど、そのうちあの悪顔猫たちも加わって、三つ巴の戦争になんないかなぁっとちょっと期待しちゃうぐらい、すごい顏なのだ。

 まっ、とにかく猫は人間を恨む。受け手の問題にすべては変換するわけだから、恨まれるとなる。でもこの場合、その猫を殺すことで恨まれたと思うわけだから、死んだ猫は恨むも何も死んじゃってるし、死んだものからの恨みは、そのまま殺した者の中で呪いに変化して、で呪いの何が恐ろしいかと言えば、それは最終的に自分の死へとつながるから。基本的に人間は死にたくないから、元に戻ってなるべく恨まれないようにすることで、自分の死を延長する。まっ何が言いたいのかと言えば、自分の死を覚悟した者は、自分以外のモノを殺せる。それが筋!覚悟もできてないヤツは殺しをすべきじゃない!中途半端に生き延びる、更生とか言って。更生の余地なし!!オレはそんな人間になりたい!

 猫を殺せれば、人間も殺せる。

 でもって、オレの名前は鴨沼ニックボック、31歳。これから筆おろしに世界とセックスする男。

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