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【第2回】頭痛と美女にフレッシュ!

 パニャスターチャ!吉増裕士です。今日お邪魔しているのはデニーズさんです。たぶん馬事公苑店。ほら、横にすき家があって、世田谷通りをはさんで向かいにはポルシェショールームのある、あそこです。

 今、これを書いている僕の隣りのテーブルに、なんとも匂い立つような欧米美女が座っております。もちろん脚を組んで。たぶん、ロシア・東欧系の美女ですね。で、たぶん名前はカリョーシャ。カリョーシャ・ゴブロフスキー。27歳。両親はヤローニアの国家情報局職員で、かなり裕福な家庭だったんですが、1980年代後半の民主化の嵐で国家は崩壊、両親は新政府に捕えられ行方不明、13歳だったカリョーシャは隣国スベロキアに遠縁を頼って出国するものの、途中で、なんか、山とか崖から出て来た悪い人に捕まって身売りされ、なんだかマカオへ。マカオでは、悪い組織に悪い仕事をさせられ、気がつけば身も心もワルワルの悪い19歳に。「あの頃のカリョッペ(マカオでの呼び名)は悪かったなぁ」(当時を知る関係者)。しかしポルトガル領マカオの中国返還が現実化してくると悪い組織はぐらつき始め、そのスキをぬってカリョーシャは大陸経由で香港へ逃亡。そこで今度はイギリス人がボスのイギリスっぽい組織が経営する本場飲茶パブでダンサーとして働くことに。香港だけにクンフーを折り混ぜたセクシーダンスが好評を呼び、またたくまにトップダンサーへ。2003年、仕事で香港へ来ていた小暮修一は現金を両替しようと銀行へ入るつもりが間違ってカリョーシャの働く飲茶パブへ。そして二人は運命の出会いを果たす。運命に言葉とか説明はいらず、あっという間にうまいこといって二人は恋に落ち、日本へ。そして今、カリョーシャは一人、デニーズで脚を組んで待っているのです。もちろん小暮修一を・・・、そんな感じの美女が僕の隣りに座ってるわけです。想像は人間に残された唯一の自由です。楽しみましょう。カリョーシャ幸せにね。

 さて、まずはこの場を借りてリボルブ方式のことから。もう稽古が始まりました。初めて御一緒する役者さんも半分ほどいるので、フレッシュです。じゃそんな初めての役者さんを紹介しましょうか?PRIDE風に。レッコーナー!ココココココバヤスィー・ユルルルルルリィィィー!!ブルッコーナー!ハリリリリトゥアー・ミホロホロホロホロ!!ジャッジ!アラララララキー・タカフィィィィィー!!以上の面々です。よろしくお願いします。

 今回はオムニバスなんですが、今のまま台本を書き進めていくと10話を越えそうな勢いです。上演時間は1時間45分ぐらいを予定しているので、このままだと1話10分程度。コントならそれでもいいのかもしれないのですが、コントともちょっと違うので、頭の痛いところです。内容の方はですね、一応連作ものということで、ある話で主人公だった人が別の話では死体だったなんて感じでどこかつながってるように書いているのですが、まっこれも頭の痛いところです。痛いついでに言っちゃいますとですね、チラシに虫の回路で世界を紡ぐなんて書いちゃったんですけど、これも痛いですね。虫の回路って、・・・意味わかんない。ジジジジジとかビビビビビって感じじゃありません?虫の回路って。伝わらないですよ、仮に僕が虫の回路で書けたとしても。でも書いてみますけど、虫たちのために。だって虫たちが観に来てくれたら、人間だとキャパ50程度のサニーサイドシアターでも、虫ならキャパ、数百万いや数千万、ギュウギュウに詰めれば数億匹は入りますからね。ただ悲しいかなお金持ってねぇんだあいつら。頭の痛いところです。

 ん!?おっ!気がつけば、カリョーシャの隣りには一人の男が。そうか、君が小暮修一君かぁ・・・、なんか小暮修一というよりは、猿枝徳太郎って感じだけど、まっいいや、カリョーシャを幸せにしてあげて・・・、修一君、なんだか目がイヤらしいよ、あぶらっぽいし。でもカリョーシャが幸せなら・・・!!なんでそんな冷めた目をしてるのカリョーシャ!愛する修一が目の前にいるのに!で、なんだ!?修一、そのサイフから取り出した5万円程のお金は?どこへ行くの?もっと楽しく話しをすればいいじゃん!デニーズで。ちょっと待って、オレも出るから。デニーズを出ると、あっ!!いつの間にこんなところにホテル街が!?やめてくれカリョーシャ違うだろ。ホテルに入って行くカリョーシャ。オレは二人に追いつき、カリョーシャの肩を引き寄せ、何やってんだよ!カリョーシャ、金もらってホテルなんて!修一、お前もおま・・・、誰だオマェ!!何やらわめくでっぷりな徳太郎。オレはポケットからナイフを取り出し、徳太郎の喉を刺して切る。これで静かになった。カリョーシャどっか違うところで話しをしよう。なっ、行こうカリョーシャ。悲鳴を上げるカリョーシャ。落ち着いて、大丈夫だよ、もうこいつの相手なんてしなくていいんだ、ほらよく見て、オレだよ、オレ、小暮修一だよ。さっ一緒に行こう、幸せになろう・・・。ホテル街に響いていた悲鳴は消え、さらにホテル街も消え、世界は糞になる。それを一匹のスカラベがコロコロ、コロコロ。どこまでもコロコロ、コロコロ。

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