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【第91回】立ち飲み紀行 秋津篇


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秋津もつ家


久々のグルメグリ!今回は立ち飲み紀行です。ここは東京西部の立ち飲み界隈としては、なかなかの存在感を放つ町、そう「秋津」です。そう!ってことでよろしくお願いします。
西武池袋線の秋津駅とJR武蔵野線の新秋津駅とを結ぶ道には、何とも魅力的な大衆飲み屋が、何とも魅惑的な大衆感を放って、点在しています。軒を並べてはいないのがまたローカル感をかもしていて絶妙なのです。
幼い頃、西武線と武蔵野線と乗り換えのこの道を歩く度、もちろんその頃は飲み屋にひかれたりはしないけれど、何か幼心に徒歩5分ぐらいのこの短い道のりに、不思議な活気を感じていたような記憶があります。
あとこれは余談ですが、亡父が晩年、ここらの立ち飲み屋で古い友達と気兼ねなく飲んだのが楽しかったと語ってたこともありまして、僕には色々思い出深い秋津の立ち飲み紀行です。

今日は新秋津駅から秋津駅へ向かって歩いたのですが、まず武蔵野線新秋津駅前で目を引くのが「居酒屋サラリーマン」。僕みたいのが店に入ったら、みんな紺、グレーの背広を年期の入ったさすがの着崩し感で酒を飲んでるおじさんたちから一斉に、お前ジーパンにハットってそんな格好で来るとこじゃないんだよここは、なんて視線を向けられかねません。と言うわけで、通過。でも考えてみりゃ、俺も十分なおじさんなので大丈夫ですねきっと。まぁでも、立ち飲みではないので、またの機会に。

そして次に秋津駅に向かって歩いて行くと、目に付くの人だかり。そこがこの界隈随一の有名店、「野島」。路上にまで人が溢れ、超満員。実は野島を狙ってたのですが素直にあきらめ、通過。

そして、写真の西武線秋津駅前「もつ家」へ入りました。
持ち帰りだけの焼き鳥屋じゃないですよ。立派な立ち飲み屋ですよ。どこから入るんでしょうね。それは持ち帰りのガラスケースの右、写真でダンボールが積んであるとこからです。もしくはさらに右、奥に提灯が連なった建物の壁沿いを進むと、カウンターの中程に入れる入り口もあります。

さて、この先は写真がないので、店内は想像してください。。。。。

ガラスケースの右側、幅60cmちょっとぐらいの正面入り口から中を覗くと、シンドバットの冒険の洞窟を思わせるような縦一列の店内。奥の様子はよく見えず、アラビアンな雰囲気はもちろんないけれど、神秘感では決して引けをとりません。カウンターと壁の間は60cmちょっと、その狭いところにアラビアンから一番遠い秋津のおっさんたちが縦一列に並んで飲んでます。

少し緊張しながら、おっさんの背中と壁のわずかな隙間を奥へ進む、どこが空いてるんだかよく分からないまま進む、と、無事カウンターの空いた場所に到着。10人も入ったら一杯だろうね、そこに今は6、7人ってとこかな。カウンターの下にはビールケース、それが荷物置き場のよう。そこにリュックを置き、まずは一安心。

さぁ注文、僕の目の前は店の兄ちゃんの定位置らしく、30台前半ぐらいの兄ちゃんが立ってます。ここは迷わず、ホッピー。すると何も言わずジョッキに氷を入れ準備してくれてる兄ちゃん、その仕事ぶりを見てたら、兄ちゃんの右肩の上あたりの壁に、「前金でお願いします」の貼り紙が。おーこういうところで緊張するのが、こういう店独自のルールってやつで、これはホッピーが出たところでまずは払わなきゃいけないんだろうなと財布をがさごそしてたら、兄ちゃん何も言わずホッピーをカウンターにトン、氷と焼酎の入ったジョッキをトン。ん?前金じゃないの?なら、とにかくここはささっと注文しちゃおうってわけで、やはり目の前に焼き鳥のお品書きが貼ってあったので、そこから皮、タン、カシラ、レバーといつもの迷いがちな俺にしたら目にも止まらぬ早さで注文。すると兄ちゃん、タレ、塩は?じゃあ塩で。そしたら兄ちゃん焼き場のおじさんに注文を通す、そして俺の方を向き、850円です。おっと、ここで支払いか、ホッピー400円と焼鳥450円、小銭でちょうど払う。明瞭会計。

そしてホッピーをジョッキにドボドボと、でも控えめに注ぎ(だって後で中、焼酎を追加するんだから)、今日の一杯目。幸せです。この自分で作ってる感がホッピーの幸せなんだよな。まずはビールって言うのも極上の幸せだけど、まずホッピーからってのも格別ですよ。などと一人(当たり前だ)で思いながら、グッ、ググとやってると、あれ、一杯目が飲み終わっちゃいそうなのに焼鳥が出てこない。ふと隣を見るとシメサバを食べてる。シメサバかぁ。その人の目の前には冷蔵ケースがあり、そこにすぐ出来るおつまみって貼り紙があって、そこにシメサバって書いてあるけどさ。そして、その貼り紙の上の貼り紙には、あら、店内の焼鳥、特に塩焼きはお時間かかります、って書いてある。あれまー。そして、その貼り紙の横には、オススメ!もつ煮の貼り紙が。しまった、ここはもつ煮を頼むべきだったか。いや今さら思っても仕方ないので、店内に貼ってある数々の貼り紙の中でから、親父の小言十か条的な貼り紙を読んで時間を潰す。この類の言葉ってその時はなるほどな〜なんて読むけど、後にはさっぱり残らないもので、現に今何も憶えてないもん。でもそんな小言の貼り紙が、10種類近く色々貼ってありました。

とまぁそんな小言を読み続けてると、はい皮からね〜、と焼鳥登場。お〜。でも一杯目飲み終わっちゃったので、ここで中(ナカ)を注文。まぁそんな風につまみと、中のペース配分を合わせるのも、一人飲みホッピーの楽しみってやつで。中150円。ここはすっと払おうと思ったら、さっき850円を小銭で払っちゃったもんで、小銭が無い。ミスった。隣の人は今日はいくら飲むか決めてるかのように、貰ったおつりをカウンターに置いたまま、そこから追加した分を払ってる。う〜ん慣れてる。さすが常連。最初に札を出すべきだったかと思いつつ1000円札を出し、受け取ったお釣りを隣の方を見習ってカウンターに置いてみようかとも思ったが、さすがにいちげんの身としては生意気ですからね、ここは財布に戻させて頂きました。

その隣の方が常連かどうかってのは、勝手な決め付けなんだけど、でもこの店、誰も一言も口を聞かない。客同士はもちろん、客と店員も。馴染みになったりすれば、酔った勢いで会話も弾んだりするものだけど。時間がまだ早いのかな、まだ夕方6時だからね。でも、全くの無言で飲み続ける。有線が流れてるだけ。みんな何も考えてないような、考えないでいられるような、そんな時間を無駄にしてるような感じが、とっても贅沢な無上の幸せだったりするんです。

そしてこういう店はそんな喜びを感じてるうちにさくっと出るに限るってもので、焼き鳥4本に、追加で中を計2杯でぴったり飲み食べ終わったところで、ごちそうさま。平のぉ将門ぉ〜武門のぉ道ぃを〜と妙なインパクトのある曲が有線から流れる中、店を出るのでした。

ところで、この写真見て今さら気付いたんだけど、ジャンボヤキトリってでかでか掲げてるけど、別にジャンボじゃなかったなぁ。ジャンボってメニューが別にあったのかな?


写真=西武池袋線秋津駅前もつ家。
お会計は、ホッピー400円、焼鳥450円、中150円×2、しめて1150円也