「Borderless Bomb 〜非国民爆弾or遁走〜」Web企画
主人公「僕」の決意表明

 僕はこの物語りの主人公です。物語りと言うからにはもちろん作者がいます。作者の名前はヨシマスユウジ、名前以外は詳しく知りません。また知りたくもありません。知ったところで今の僕がこの物語りから自由になれるとは思えないから…。

 安易に自由なんて言葉を使ってしまいましたが(もちろん本当は僕ではなく作者が使ったわけなのだが)、この世の中(またこれも微妙な表現ですが、活字も含めた人間が人間でいられる世界のこと)に自由というものは本当にあるのだろうか、自由というのは、一体何なのか、規制からの自由ではなく、まったくのただの自由というのは存在するのか、それを探し求める物語りの主人公がこの僕だそうです。不自由な主人公。

 ならば作者は自由なのか?僕を主人公とする物語りにおいては自由であり、かつまた不自由なのかもしれない。だったら僕はあえて、この物語りから僕自身を自由にしようとするのではなく、この物語りに作者もからめ取り込んでやろうと密かに思ってるのです。自ら作り出す世界にがんじがらめになって身動きできなくなる作者、それを指さして笑う僕。

 過去とは未来の残がいであり、現在とは未来を消化し過去を排出するウンコシステム。システムの中において、人間はまさにマシーンでしかない。マサニマシーン。量産されたマシーンにもはや消化する未来はない、未来を食料とするはずだったシステムは矛盾というウイルスで機能障害に陥り、あげくの果てには、過去を食いつぶして生きながらえようとする。自家中毒の果てにあるものは?ノスタルジー?センチメンタリズム?それこそクソくらえだ!脱糞宣言、脱ダム宣言よりは、気がきいてるぜ!

 昨日の自分と明日の自分をうまく一致させようと四苦八苦する人生と、今日の自分は今日だけの自分とその日その日を誕生日とする人生、どっちがいいか?あーあ、なんだかノってきた、オレも作者も!オレなんか、さっきまで僕だったのにオレになっちゃってるし。こうなったら作者だけじゃなく、これを読んでる人、はては読んでない人、呼んでない人、4出ない人、そんなこんなですべての物事を取り込む、ブラックホールのような物語りにしてやる!隠しきれなくなった矛盾と仲よく付き合うロンパリ思考でビッグバン!!決まった!

主人公「僕」の日記

階段を登る

1

 僕は今、階段を登っています。登り始めて、もうどれくらい経つのでしょう?はじめの頃は、一日一日頭の中に“正”の字を描いて数えていたのですが、それも1000を超える頃には、その正の字1000個分の不気味さと無意味さにやられて数えるのをやめてしまいました。

 ここで皆さんに勘違いしてもらいたくないのは、“人生の階段”を登っているなんていうテアカミドロっぽいことは思わないで下さいということです。テアカミドロがどんなものか知りませんが、そんな観念的な意味などまったくなく、もうただただ、この二本の足で階段を登り続けています。

 では、なんで階段を登ってるんだと皆さんは思われるかもしれませんが、申し訳ありませんがお答えできません。忘れてしまいました。今の僕にとっては、心臓が意識しなくとも鼓動を打つように、この二本の足は登り続けるのです、たぶん。心臓が止まったら死んじゃうように、この足が止まったらおそらく僕はポックリだと思います。心臓と違って、足は目に見えるだけに、人間は死ととなり合わせだと実感できるのが、せめてもの救いであり、やっかいなところです。

 僕は何故生きるのかイコール何故登るのかです。登りはじめた理由、それは過去の僕が知っているのかもしれませんが、今の僕には関係ありません。そのうち過去の僕をこの作者が勝手に産み出してくれるでしょう。

2

 僕はやっぱし、観念の中で存在してたんだっちょ。だって、この階段を登り始めて以来、メシ食ってねえもん!ウンコとションベンはした。始めの頃。1、2回な。でもそのあとしてねえもん、屁だけ。ヘは出るのな、あっ、このヘはカタカナのへね。で、カタカナのへのへはひらがなのへね。でもってカタカナのへのへはひらがなのへのへは文字のへじゃなくて、富士山を描いてみた。絵文字?屁文字だろ。あっそう言えば、こないだあんまりにも登るだけでヒマだったから、自分のケツと屁で会話してみた。プップッとかブューブューしか言わねえからつまんなかったけど、いつの日か話せるといいのにな。ブワォフッ。

3

 最初、見た瞬間は牛乳のしずくか、シロマグロかなあと思ったんです。だって白かったから。でもよぉく目をこらして見ると、人なんですよ。人間。女の人。高いビルでしたけど、目と目が合いましたから。うるんでました。だから女の人ってわかったんです。そんなただ見ただけじゃ女の人かどうかなんてわかりませんよ。だってものすごいんですから、そのビル。高さが。そのビルねかせて単位を長さにしてみたって、そうとうなものだと思いますよ。えっ重さ?そりゃ重さにしてみたって長いでしょ。いや高いでしょ。重いでしょ。つまりはデカイんです。そのビル。えっ、なんでそんな女かどうかもわからない高さなのに、目が合ったってわかったのかって?あっほんとだ!なんでだろ?目が大きい子だったんじゃないですか。くろめがちで。うるんでるんです。えっそんな大きな目があるわけないって、あっじゃその子の目が高かったんじゃないですか、って言うか逆に地上に向かって低い?長い、デカイ!とにかく目と目が合ったんですよ!ワシとかは獲物を見つけると獲物に焦点がズームアップするんですから、別に不思議なことなんて何もないでしょ!怒ってませんよ!えっ怒ってるって、怒ってねえって!!ただビックリマークを入れてるだけで、怒ってなんかいねんだよ、ボゲ!!!

 とにかく目が合った瞬間、僕は、僕だけにはわかったんですよ。あっこの人、自殺する気だ!って。今のビックリマークは怒ったビックリマークですよ。だってそりゃ怒りたくもなりますよ。そんな今から自殺しようなんて人見ちゃったんですから。たのむよって感じ。見て見ぬふりしようと思いましたけど、けっこう難しいんですよ、ふり付けが。見ちゃってるし。もう、どうしようと思って、そのビルの下で三日間寝泊りして考えました。で出した結論が助けに行こう!って答えですよ。うるんでましたから。くろめがちで。目が。悩んだ三日間で、二回その目を想ってマスターベーションしたぐらいです。好きなんです。そんな目が。そんな目をした女の人が。後悔しましたよ。なんで三日間もモンモンと悩んでたんだろうって。でも結論は出たし、思い立ったら、すぐ行動に移すのが僕の欠点ですから、またそこで二日間寝泊りしました。マスターベーションは7回もしました。モンモンとしてたんでしょうね。助けに行かなきゃって。で、助けに行くって結論も出てるわけだから、がぜん性欲もわいてきたんでしょうね。7回も。えっバカな!最高記録は1日で13回ですから、まだまだ。

 ……ごめんなさい。今この話ししてたら、なんかわいてきたので、今日はこれで。また。

僕の過去

1

 僕には、まったく過去の記憶がないのかと言うと、そんなことはありません。このビルに登り始める以前の記憶はちゃんとあります。

 昔、僕は人間で、モルモットで、魚でした。魚の頃はとても幸せでした。クルクル回りながら、何も食べず、何も考えず、ひたすらフワフワしてました。でもずっと魚のままではいられませんでした。ある日をさかいに僕は無理矢理二つの浮き袋でガラっぽい空気を吸って地ベタをはいずり回るモルモットになってしまいました。

 でもモルモットにもモルモットなりの幸福があります。それは一生、モルモットでいることです。高い壁に囲まれた箱庭も、薬づけの食料も、頭からのびた電極も、モルモットであることを意識せずにいれば、何の問題もありません。しかし僕は気付いてしまいました。そのきっかけは、ある日、白衣を着たオトナが「調子はどう?」と笑顔で語りかけるその彼の目がヒツジの目だったからです。僕はその目を見た瞬間、ギョオムとモルモットらしからぬ声をあげ、頭の電極をひきちぎり、ゲロとフンをまきちらしながら箱庭の壁をよじ登ろうとしましたが、爪のない僕は、血まみれで壁にぶちあたることしかできず、二十四のヒツジの瞳が見つめる中、フガフガ気を失ってしまいました。

 どれくらい時間がたったのでしょう?意識を取り戻した時、僕はベッドの上で人間になってました。

2

 人間になってからの僕はモルモットだった頃よりモルモットっぽくなりました。いつもピクピク周囲の臭いをかき集め、いつもビクビク身を隠せる場所を探していました。人間には見たり、聞いたり五つの入り口があるのに、出口は一つしかないので、頭の中がゴチャマンになると、僕は白目をむいて、泡をふきながら倒れてやりました。

 そうこうしているうちに、僕のチンゲはうずを巻き、ケツの穴も梅干しから菊の御紋に格上げし、立派なオトコになりました。オトコとなった僕は当然のごとく、オンナを求めて旅に出ることになりました。チチは僕の股間のヤツにメッキをほどこし、ハハは僕のケツの穴にソッとお守りを忍ばせてくれました。出発の日は僕の18回目の誕生日。そしてその日になってはじめて僕には13140人ものチチとハハがいたことを知りました。ズラッと並んだチチ、ハハを見て僕は目からハラハラとウロコを落しながら手をふり、やっぱり僕は魚だったんだと確信して、僕の後ろに広がる、ニッコリ笑顔で、パックリおまたへ旅立ったのでした。

3

 ジャングルをかきわけ、ぬかるみにはまりながらのオンナ探しの旅は想像以上のものでした。想像の方が良かったくらいです。人間にあたえられた唯一の自由が想像力だってことを僕はこの旅で知ることもなく旅を続けました。

 ある日、目の前に28cmぐらいの巨木をバッコンバッコン切り倒す一人のキコリがあらわれました。僕は彼に「オンナはどこですか?」と聞いてみました。するとそのキコリは「オメェさ!」と言っていきなり僕を四つんばいにしたかと思うと、目にあまる早ワザで僕と自分のズボンをずりおろし、彼の股間のヤツを僕の菊の御紋にめがけ、ぶちこましてきました。僕の御紋があわやカリフラワーになる瞬間、目もくらむ閃光があたりを照らし、すさまじい爆音だか屁音だかとともにキコリは108コの肉片となってふっとんでいきました。そうです!ハハがソッと忍ばせてくれたお守りが僕を救ってくれたのでした。僕はズボンをあげるのも忘れ、止まることの知らない大つぶのウロコを落しながら、小一時間踊っていました。

 と、ウロコだらけの地面から何かがニョキッと顔を出しました。いやそれは顔ではなく、芽でした。いや目でした。僕は川から水をくんできて、その目にあたえました。するとその目はみるみるうちに、顔となり、体となり、最後には一人前のオンナとなりました。彼女は全身ドロだらけだったので、川で洗ってやろうと思い連れていこうとしたのですが、彼女の足の裏からは根というか両親がはえていたので、ひと苦労でした。なんとか両親をひきちぎり、川で洗ってみると、白いドレスを着た、それはそれは美しいオンナでした。ドレスが濡れていて、体のラインはおろかドレスの中まですけて見えました。力強く脈打つ心臓、コンパクトにまとめられた腸、なんか緑色した小袋、それらすべては生きている証しでした。

 しかし、一番美しきあるべき彼女の目には、ブ厚いウロコがおおいかぶさっていたのでした。

4

 僕は必死でした。毎日、毎日あらゆる手をつくして彼女の目のウロコを落とそうとしました。そしてそのあいだ中、彼女も僕にあらゆることをしてくれました。それはすばらしいものでした。その日もいつものように、お互いあらゆる手をつくし合い、疲れ果て横になっていると、しげみから一匹のヘビが出てきました。そのヘビはあるはずのない右手をさしだし、彼女へマンネリの実をあたえました。

 純粋な彼女がそのマンネリの実を一口、口にふくんだその瞬間、なんと彼女の両目のウロコがパカッとバカっぽい音をたてて落ちたのです。そのウロコの落ちた彼女の目は、少しうるんでいて、くろめがちな美しい瞳でした。「ヒトミ!」と彼女の名を呼ぼうとする僕よりも早く彼女が言いました。

 「このメッキチンコのポンコツマシーンが!!人のウロコ落とす前に、テメェのウ○コ落とせ!□か○かじゃねえんだよ人生は!テメェといたんじゃ進歩しねぇ!チンポしねぇ!さっさとここから、消えてうせる!!」

と捨てゼリフを残し、彼女はあるはずのないヘビの左手をにぎり二人してスキップしながらしげみの奥へと消えていったのでした。

野の話

1

 どうでした?僕の過去。あらゆる人間にとって、過去とはフィクションであるっていう前提のもと、語らせていただきました。っていうか、言葉に変換されてる時点で、もうフィクションですし、ましてや、僕自身いまだ言葉でしかないわけで。

 疲れ知らずの僕の足は、何故登るのか理由もわからぬまま階段を一歩、一歩、登っています。ではここで“階段を登る”という行為をメタファーとしてとらえたらどうなるか。なんだメタファーって?メタセコイア?メタセコイアとは、中国奥地にみられる、非常に大きな木で、化石としても発見される。んー、辞書では、メタセコイアをこう説明してあるのですが、この文章の中の“非常に大きな”という表現はあいまいですね。“木としては”っていう意味なんでしょうけど、これをもし、字もろくに読めない3才の子がみたら、なんか、とまどっちゃいますよ、宇宙と並べたりなんかして。宇宙よりも大きなものって何か知ってます?僕は知ってます。それは宇宙よりも大きなものです。ほら、また言葉だ、言葉!コトバ!コンクリートってコトバからできてるんですよ、ホントに。今度、コンクリート工場へ行ったら、その辺にいるオジさんに話しかけてみてください。コトバ話しますから。

 とにかくコトバだらけです。さあみなさん、書を捨て、街を捨て、野に出ろ!僕が野に出たころのお話をしましょう。

2

 この世に“野”ほど恐ろしいものはないでしょう。この“野”、読み方に規則はありません。“の”でも“や”でも“ユニクロ”でもかまいません。“街”の方が断然恐ろしいよ!と言う方もいるかもしれませんが、“街”で恐ろしいものと言っても、せいぜい人殺しぐらいでしょう。しかし人っ子一人いない“野”では、その人殺しすら、人殺しになれません。では、“書”だって人の考え方を変えてしまうほどの恐ろしいものだ!と言う方もおられるでしょう。しかし“野”では、特に僕がかよっていた小学校のグランド裏の“野”には、エロ本という“書”が、それこそ野ざらしの状態でした。僕は野球の練習中、よくわざと暴投し、たまをさがすふりをしてそのエロ本を読んだものです。つまり、“野”はおおげさに言えばあらゆる事象を内包しているのです。

 さて、僕はヒトミの目のウロコを落すことに失敗してからは、何も手につかず、ただひたすら、空をながめて日々を過ごしていました。そんなある日、その空の、わがもの顔で輝いている太陽の右下のところに、なんか、矢印とその横に“ここからめくって下さい”という文字が目に入りました。UFOか?、思いつつ、おもいっきり、それはもう、おもいっきり手をのばし、ごうまん太陽にジリジリ手を焼かれながら、なんとかそこをめくることができました。すると、どうでしょお、めくった空がくるんっとたれさがるその奥にさらにビニールコーティングされた空が現われ、そこには、390000円という金額が請求されていたのです。僕はびっくりしました。空がめくれるのはまだしも、こんな現実的な額のお金を請求されるなんて、僕には、まったく心あたりがありません。その請求書の右下端には、クレジット“野”という会社名と、電話番号が書かれてあったので、僕は早速、電話して間違いを訂正しようと思ったのですが、運の悪いことにあたりには電話がありません、あっちのあたりで、鳩がポップコーンをついばんでいるだけです。と、その中の一羽がどう見ても、祖先は伝書バトです!っていう顔の鳩がおり、僕はピピンッときたので、そっとその鳩に近づき、ザクって感じでアレすると簡単につかまえることができました。そして僕はその鳩の口を両の手で力まかせに、真っぷたつに引きさきました。すると思った通りその鳩は折りたたみ式の携帯電話でした。なるほど、動物とテクノロジーは進化するのです。僕は感心しながらその血まみれの携帯電話を使ってクレジット“野”に電話してみました。コールを3つ聞いたところでつながり、向こうから、美しいソプラノをした女性の声が聞こえてきました。

3

 女「ヘイ、クレジット“野”でっせ」

 そのソプラノはちょっとメロディーをつけながら話す、西方面の人でした。

 僕「あの、なにやら心あたりのない請求書が僕の空でして」

 女「はあ?なんや言ってることが、アカスカポンでっけど、まぁええよ、それよか、心あたりがない?
   んな、アホな、バカか!よぉーく考えてみなっせ、心あたりの一つや二つあるだろがい!」

 僕「はぁ、それが・・・ちょっと時間ください」

 女「バカかって!あかん、あかかん、チャカカン!時間ほど高いもんはないってやんでぇ、心あたりが
   ないっつうのが心あたりってなもんでえい!けんかと火事は江戸の花ぁぁああっぁーぁっ、一度店
   に顔 出しねえい!あばよ!」
    
 と、もしかしたら東方面の人かもしれないと思わせて、一方的に電話を切ってしまいました。

 この短い時間のあいだに、我がもの顔太陽は、卑下すぎお月さんに変っていました。そのポッカリうかんだ月に照らされ、僕の足元には僕よりすこし背の高い影が寝ていました。と、とつぜんその影がとび起き、僕の足元からはなれ、走り出しました。僕は影とは別れたくないという気持ちもあって、必死に僕の影のあとをおいかけました。影は草や木などの障害物をよけることなく走っていきます。その草木を僕がよけると、僕の影はのびたり、ちぢんだりします。「あぁ、シンクロしてる、シクロナイズド・自分イング」とちょっとホッとした気持ちになった瞬間、今まで僕の前を走っていたはずの影は、いつもどおり、僕の足元で深いねむりについていました。そして、気がつくと、僕はクレジット“野”の前に立っていたのです。

4

 「クレジット“野”」、ゴシック体と毛筆体の中間ぐらいの字体で書かれた看板の下の扉をあけ、中に入るとき、僕はひとつの想いにとらわれていました。「あぁ、ここに来る運命だったんだなぁ、すべてはこうなるためにあったんだ」と。中に入るとまっすぐこちらを見ている女性が立っていました。少しうるんだ、黒目がちな瞳、・・・ヒトミでした。彼女は軽くうなずきながら、奥へと歩き始めました。僕もそれにしたがい奥へと進みました。二人とも無言で一分ほど歩いたでしょうか、突如、二人の前に大きな、それは大きな、タマゴが現われました。それを前にして、ヒトミは振り返り、またうなずき、中へと入っていきました。僕は一瞬、ちゅうちょしましたが、ひとつ深呼吸をすると落ち着き、ヒトミが消えた後を追いかけました。そして、僕は彼と初めて会うことになったのです。

5

 緊急対談−“主人公と作者、そしてヒトミ”

 ヒトミ「えー本日はお忙しいところお集まりいただき・・・、・・・忙しくないか、二人とも、あたし
     も、じゃまあ、適当に、ダラッと、シャキッと、いちおう緊急だから、そのへんよろしくって
     ことで、じゃまず・・・どっちだ?どっちがいい?紹介」

 A  「主人公の方からで(小声で)」
  
 ヒトミ「あっそう、じゃ・・・誰だオマエ!Aって?三人だけなんだから、あれ?いない、どこいった?
     ・・・というわけで、まず主人公さんから自己紹介、・・・いいっか、しなくて、今までさん
     ざんっぱら、してきたんだから、うん、いいな、じゃ次、作者さんどうぞ」

 作者 「どうも、作者のヨシマスでッすッ(三瓶のようなフリで)」

 ヒトミ「うひょおー、びっくり、もう一回やって」

 作者 「どうも、作者のヨシマスでッすッ(宮迫のようなフリで)」

 ヒトミ「パクリ、パクリ!パックリヒトミでーす、よろしく、では、さっそく進んだり、もどったり
     します。」

 作者 「もどっちゃダメでしょ、っていうかまだ全然進んでないんだから、もどれなあーい♪」

 ヒトミ「今日はノリノリピーですね、しょっぱなからつっこんだり、歌ったり、音符がカワピー!!」

 作者 「おいおい、キスするなよ、おいおい、そこまでするか、気持ちいいからよしなさい」

 ヒトミ「はい、ではまず、初めて会った互いの第一印象から、主人公さん」

 主人公「・・・別にありません」

 ヒトミ「ねえってか!?ねえってよ、じゃ、作者のあんたは?」
  
 作者 「あんたって・・・、そうね、もう少しゲソゲソかと思ってたけど、わりと元気そうなんで、
      うげえぇ!!」
  
 ヒトミ「つまんねえこと言ってんじゃないよ!ブッスリだぞ!今からつまんねえこと言ったヤツは口と
     ケツから手つっこんで、こうやってグルングルン回すぞ!」

 作者 「ボイボイ(おいおい)、ビトミグン(ヒトミ君)、ポウ、ビャッテルヒャヒャイ(もうやって
     るじゃない)、ペガマバルヒョー(目が回るよ)、バカブベペー(たすけてー)」

 庭  「もう少しおしとやかに、先を進めて(小声で)」

 ヒトミ「はい、ごめんなさい、!だから誰だオマエ!庭ってなんだよ、庭って!・・・あれ、またいない、
     まったく世の中、スットンキョ、スットンキョヒトミでーす。さて、宴もたけなわですが。今日
     はここまで、また先週ぅー」

6

 ヒトミ 「こんにちは、今週は来週に引き続き、「主人公と作者、そしてヒトミ」について、お送りしてい
      きたいと思います。私、司会進行のタマコと申します。よろしくお願いします。」

 作者  「いや、タマコって、・・・キミはヒトミくんでしょ、うそついちゃダメ」
  
 ヒトミ 「タマコです」

 作者  「なんでそんなウソつく?見てごらん、キミのセリフの前にヒトミって」

 タマコ 「タマコです」

 作者  「あっ!やられた、ウソがウソじゃなくなった、・・・じゃオレも!」

 タマコ 「え!?ずるい」

 巨泉  「ウッシッシッ、なんちゅうか、本中華」

 タマコ 「古い!じゃ」

 巨泉  「ウッシ?」

 宇多田 「離婚します」
 
 巨泉  「ダメだっつうの、ヘイちゃん、そんなこと言っちゃ(巨泉風に)じゃ」

 宇多田 「ヒッキ、ヒッキ」
  
 ラディン「やるぞ!」
  
 宇多田 「あんたこそ、ダメじゃん、オートマッティック」

 ラディン「ラディっちゃって、わけわかんねぇ」

  二人、バカ騒ぎ

 主人公 「・・・いい加減にしてくれ!・・・早く本題に入ってくれませんか」

 ヒトミ 「じゃ、時間は山ほどあるのに、本題に入ります。では、主人公にお聞きします。本題って何?」

 主人公 「知らないよ!僕は、あんたに導かれて、なんか、この、タマゴの中に」

 ヒトミ 「あぁ、うるさい、ちょっと黙って、作者さん、ねないで下さい」

 作者  「あっごめんなさい」

 ヒトミ 「実はこの対談、作者さんが主人公さんにお話があるということで、開かれました。ですから作者
      さん、何か言え!」

 作者  「はい、人生というのは、荒波に続く荒波の中、そこにうかぶ、一隻の小舟に」

 ヒトミ 「例えるな!サックリ言え!」

 作者  「はい、えっと、主人公くん、キミに、その、あれだ、」

 ヒトミ 「早ぐぅ」

 作者  「あっ!ヒトミくん、ささってる、ささってる、主人公くん、今回は主人公をおりてくれ!」

 主人公 「え!?」

 作者  「キミが階段を登り続ける芝居をやろうと思ってたんだけど、なんていうか、難しいっていうか、
      書けないっていうか、あきちゃったっていうか、そんな感じ!この対談だって、もうやめたい!
      本番まで時間ないんだから、台本、ラスト書かなくちゃだし。」

 主人公 「ちょっと待って下さい、主人公をおりる、おりないの前に、僕はまだ階段登ってません、今は、
      僕が階段を登ってる途中の過去の回想からここへ流れてきたわけで、時間軸がめちゃくちゃです
      よ!」

 作者  「だから、人は過去で生きてるってことで」

 主人公 「なに言ってるんですか!そんな勝手なこと」

 作者  「オマエ、ウザイ!」

  するとポワンという音

 ヒトミ 「あっ!消えちゃった!主人公消えちゃった!」

 作者  「作者の特権だ・・・やるときは、ためらっちゃダメなんだよ」

 ヒトミ 「残酷な世界・・・えい!」

 作者  「あっ・・・」

  作者消える。

 ヒトミ 「作者消失、気まぐれヒトミの特権よ・・・、さあ、ここからはヒトミの恋愛とセックスの伝導指
      南番組、ラブボブッあっ・・・」

  ヒトミも消える。
  何もない空間、というか空間すらない。
  とそこへ全知全能の神のようなものがやってくる。

 神のようなもの 「どうも、伊藤弘雄です。おヒマでしたら、僕の日記ものぞいてみて下さい、恋人募集中
          です。テクニックはあります。では。」

〜終り〜